WORDS / MEMORY / EVERYDAY LIFE
武岡 隆ブログ
本、活字、日本語、物語、記憶、時間。日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆自身の言葉で静かに綴ります。
仮の書き出しが、本文の一部になるまで
先へ進むためだけに置いた冒頭の一文が、後続の語調や順序を引き受け、外せない一文へ変わっていく。文章が前から後ろへ書かれるだけではないことを、書き出しと本文の関係から考えた。
続きを読む首振り扇風機がこちらを外れる数秒
首振り扇風機の風は、正面を通り過ぎるとしばらく戻ってこない。その数秒は送風の中断ではなく、風を一方向へ留めない仕組みそのものが生んでいる。
続きを読む台詞の横にある小さな動作
会話の合間に置かれる視線や指先の動きは、誰が話しているかを示すだけではない。口では言い切ったあとにも残る、人物のためらいについて考えた。
続きを読む背表紙の小さな数字が、隣の本を決めている
図書館の分類記号は、一冊の置き場所だけでなく、隣に立つ本まで決めている。題名の遠い本が並び、同じ対象を扱う本が離れる、棚の不思議について考えた。
続きを読む題名を頼むと、本文の迷いが見えてくる
AIが出した題名の候補が、まるで別々の文章に付けたようにばらつくことがある。そのとき比べたいのは候補の巧拙だけではない。元の文章に、どの段落も譲らない複数の中心が残っていないかを考…
続きを読む「お湯」から「お」を取ったあと
「お湯」から一字を取れば「湯」になる。ところが、失われるのは丁寧さだけではない。同じものを指しているはずの二語が連れてくる場面の違いを考えた。
続きを読む氷が鳴らなくなるまで
夏のグラスでは、氷がまだ残っているのに、触れ合う音が減っていく。冷たさだけでは測れない飲み物の時間を、氷の配置とグラスを動かす行為から考えた。
続きを読む「お先に」は、残る人へ向けた言葉
「お先に」は、自分がどこへ行くのかを何も語らない。そこに示されるのは行き先ではなく、その場に残る人との順番である。この短い表現が誰を見ているのかを考えた。
続きを読む目次に並ぶ、まだ読んでいない数字
目次のページ番号は、章の始まりを示すだけの数字である。それなのに、隣り合う数字の間隔から、読者はまだ知らない章の長さや本全体の歩幅まで想像している。
続きを読むだから一字を直す仕事は、一字だけを見る仕事ではない
行末の一字を直しただけで、次の行も、その先のページも変わることがある。文章を正す作業と本の形を整える作業が、なぜ別々では済まないのかを組版の具体から考えた。
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