武岡出版 TAKEOCA PRESS

武岡 隆ブログ


WORDS / MEMORY / EVERYDAY LIFE

武岡 隆ブログ

本、活字、日本語、物語、記憶、時間。日々の中でふと立ち止まったことを、武岡 隆自身の言葉で静かに綴ります。

落ち葉の付け根にできる、離れるための層

落ち葉という名前は、すでに地面へ移った葉を指している。そのため私は、葉が枝を離れる仕組みまで、つい「落ちた」という一瞬の出来事として考えてしまう。

重さに耐えられなくなった葉が、付け根から破れて落ちるような見方である。実際の落葉樹では、葉柄の付け根に「離層」と呼ばれる部分があり、そこで葉を切り離すための変化が進む。

枝と葉の境目が偶然に裂けるのではない。離れる場所があらかじめ限られ、その場所の細胞同士の結びつきが弱くなっていく。この仕組みで気になるのは、何かが葉柄を切るのではないという点だ。

離層では、細胞の間をつないでいる成分が分解され、細胞同士が離れやすくなる。紙をはさみで切るように線を入れるのではなく、接着している部分をほどいていく方に近い。

外から見れば細い付け根が折れただけでも、その内側では折れる前の準備が進んでいる。葉が枝につながっている間は、養分や水を運ぶ維管束も通っている。

離層の結びつきが弱まっても、すべてが同時に外れるわけではない。最後まで残ったつながりが葉の重さや外からの力に耐えられなくなると、そこで葉が離れる。

落下は変化の始まりではなく、積み重なった変化が外から分かる形になった時点なのだ。その進み方には、日照時間や気温、水分状態などが関わる。葉でつくられる植物ホルモンの状態が変わり、離層が働きやすくなる。

紅葉や黄葉は目に入りやすいが、同じ時期に付け根で進む変化はほとんど見えない。葉の色が変わることと、葉が離れることは、秋の一場面としてまとめて見えながら、植物の中では別の仕組みとして進んでいる。

さらに、離層は葉を落とす側だけの仕組みではない。葉が外れたあと、枝には葉痕が残る。枝側では保護するための層がつくられ、水分が失われたり、外から病原体などが入り込んだりするのを抑える。

切り離す準備には、落ちる葉のための境目と、葉を失った枝を守る処理が重なっている。二つの処理は、同じ境目に並んでいても役割が逆向きである。離層側では葉と枝の境界の強度を下げ、一定の位置で分離が起こるようにする。

これに対して枝側では、維管束が途切れて露出する面をそのままにせず、葉のあった場所を新しい外側の面として整える。前者は分離点をつくる働き、後者は分離後の枝の境界をつくり直す働きである。

もし前者だけなら外れた位置が枝の開口部として残り、後者だけなら葉を定位置で切り離せない。ここには少し非対称なところがある。葉に注目すれば、枝から切り離される過程である。

一方、枝に注目すれば、自分の一部を外したあともそこに残るための過程になる。同じ付け根で起きていることを、落下だけで説明すると、枝側の仕事が見えなくなる。

もちろん、枝葉が強い力を受けて途中から裂けることもある。すべての葉が整った離層の働きだけで落ちるわけではない。また、植物が人のように落葉を決めていると考える必要もない。

ただ、季節に応じて葉を外す植物には、壊れるのを待つのとは違う仕組みが備わっている。地面にある葉から枝へ目を戻すと、付け根には小さな葉痕が残っている。

それは葉がなくなった印であるだけでなく、露出する面を枝が新しい境界として整え、残った側を保護した処理まで含む痕である。

#落ち葉#離層#落葉樹#葉柄#葉痕#植物の仕組み#秋の変化#季節の雑学#武岡隆#武岡出版

新しい記事をメールで受け取る

武岡 隆の新しい文章が公開されたとき、メールで静かにお知らせします。

登録料・購読料はかかりません。メールアドレスはブログ更新通知のためだけに使用します。いつでも解除できます。

購読を解除する